毎回、前提から説明していた
結論から書きます。フォルダとターミナルを使うと、AIに自分の活動のほとんどを渡せます。そこへ行き着くまでには時間がかかりました。
扱っている内容は、分野がばらばらです。大学の課題、サークルの運営、インターン先の開発、大学院の受験準備。背景がそれぞれ違います。そのため、質問のたびに次のような前置きを書いていました。
大学2年で情報工学科です。サークルを運営していて、メンバーは40人くらいで、いま課題は3つあって、それとは別にインターンでNext.jsを触っていて……
これを毎回書きます。書かないと、返ってくる答えが一般論になります。書くと、質問より前置きのほうが長くなります。タブを閉じれば消えるので、翌日また同じことを書きます。
半年ほど続けて、原因は使い方のほうにあると判断しました。AIに文脈がないのではなく、こちらが文脈を保存していませんでした。
AIに見えている範囲
同じモデルでも、答えの質は渡した材料で決まります。聞き方の工夫の話ではありません。見えていないものについては推測で答えるしかない、という話です。
チャット画面の中でこれを解こうとすると、毎回貼り直すことになります。そこで、AIをブラウザから出して、自分のファイルがある場所へ移しました。
いま使っているのはターミナルの中で動くAIツール(Claude Code)で、次のように動きます。
- 指定しなくても、必要そうなファイルを自分で探して開く
- コマンドを実行して、その出力を見て次を判断する
- そのフォルダにある過去のメモや設定が、そのまま材料になる
貼る作業がなくなるのは副次的な効果です。主な変化は、材料が常に同じ場所にあることでした。

作業する場所をひとつにする
最初にやったのは、ツールを増やすことではなく、置き場所をひとつに決めることでした。
second-brain という名前のフォルダを作って、自分に関するテキストを全部そこへ集めました。中身は5種類です。
second-brain/
├─ CLAUDE.md ← AIに毎回読ませる指示。ここだけは常に読まれる
├─ planning/ ← 半年に一度しか書き換えない上位の方針
├─ journal/ ← 日々の生ログ。2026-08-18.md のように日付で1ファイル
├─ knowledge/ ← 再利用できる形に直した知見
└─ projects/ ← プロジェクトごとの文脈。中にそれぞれのCLAUDE.md

普通のフォルダで、中身は全部Markdownです。特別な仕組みはありません。効果があったのは、どこに書くかで迷わなくなった点です。置き場所が決まっていないメモは、書かれないまま終わります。
Gitで管理しているので、変更の履歴も残ります。半年前に何を考えていたかを、後から差分で読めます。
常に読まれるファイルに書くこと
次にやったのは、毎回口で言っていたことをファイルにすることでした。
このツールには、作業を始めるときに必ず読まれるファイルがあります(CLAUDE.md)。ここに、毎回説明していたことを書いておきます。
自分のファイルには、たとえば次のように書いてあります。
## Skill Level(正直な現在地)
- 理論先行。概念理解は深いが、実装力はまだ未熟
- Production レベルのコード経験ほぼなし
- → 暗黙の前提を置かず、実装の細部まで説明すること
## Working Principles — 私との進め方
- 直接的で正直な評価を最優先。お世辞・過剰な同意は不要
- 結論を先に。冗長な前置きを避ける
- 提案には理想論でなく、コスト・工数・リスクを正直に併記する
- 環境は Windows / PowerShell。シェルコマンドは PowerShell 形式で出す

書く対象は、良い指示の文面ではなく、毎回繰り返している指摘のほうです。
macOSのコマンドが出てくる。褒め言葉から話が始まる。知っている前提で説明される。同じ指摘が3回を超えたら、1行のルールにする価値があります。一度しか思わなかったことは書かなくてかまいません。
自分の場合、効果が大きかったのは「お世辞は不要」と「PowerShellで出せ」の2行でした。特別な指示ではありませんが、毎回の指摘が不要になりました。
読み込む範囲の分け方
最初はここで失敗しました。書き出したことを全部このファイルに詰めた時期があります。
プロジェクトごとの事情、過去の経緯、細かい決定。半年で数百行になり、精度が落ちました。関係のない情報が増えるほど、大事な指示の比重が下がります。
いまは2段に分けています。
| 置き場所 | 読まれるタイミング | 書くこと |
|---|---|---|
全体の CLAUDE.md |
いつも | 自分は誰か、どう進めてほしいか。極力小さく保つ |
projects/oif/CLAUDE.md |
そのフォルダで作業するときだけ | その活動の文脈、決定事項、いま何が課題か |
サークルの作業をするときはサークルの文脈だけが、インターンの作業をするときはその文脈だけが読まれます。全体のファイルの冒頭には、自分への注意書きとして次のように書いてあります。
このファイルは全セッションで常時ロードされる。小さく保つこと。 詳細は
projects/<name>/CLAUDE.mdとknowledge/に置く、ここには書かない。
プロジェクト側のファイルは、冒頭で読まれる範囲を宣言しています。最初に書いてあると、あとから中身を足すときに迷いません。

常に読ませるものと、必要なときだけ読ませるものを分けます。文脈を貯める仕組みを作るとき、最初に決めるのはこの線です。
会話中に出た事実の置き場所
ファイルに書くのは自分で管理したい情報です。それとは別に、会話の中で出てきた事実を残しておきたいことがあります。
たとえば「毎週この時間は授業で埋まっている」「この団体の話をするときに個人の事情を判断材料に入れない」といったものです。ドキュメントを書くほどの量ではありませんが、忘れられると毎回説明し直しになります。
こうしたものは、1件1ファイルの短いメモとして貯めています。索引だけを見ると次のようになります。
- [Class Schedule] — 毎週固定の授業時間。予定を提案する前に必ず避ける
- [実装ゼロ前提] — 実装力はほぼゼロ前提で提案せよ。理論と実装は別物
- [Deadline-Driven Execution] — 長期計画は立てて満足で終わる。締切直前×優先度順でしか進まない

3件目は、計画を立てて実行しない状態が何度か続いたあとに残したものです。いまは計画を求めると、先に締切を聞かれます。
日誌の書き方と週末の整理
日々のメモは journal/ に日付ファイルで放り込むだけにしています。整形はしません。箇条書きの断片でかまいません。ここは常時読まれない場所なので、量が増えても他の作業に影響しません。

週末に、その週のログを読み返して、もう一度使える形になるものだけを上の階層へ引き上げます。
- 何度も参照しそうな手順や調べ物 →
knowledge/ - 進め方そのものに関わる方針 →
CLAUDE.mdか記憶メモ - それ以外 → ログのまま置いておく(消さない)
この引き上げ作業も、AIに読ませて候補を挙げさせています。1週間分のログを渡して、再利用できそうなものだけ抜き出してほしい、と頼むだけです。全部は昇格させません。上の階層に上がるものが少ないほど、上の階層は機能します。
許可の設定
自分のフォルダでAIを動かす以上、ファイルを書き換えたりコマンドを実行したりします。操作を誤ると戻せないこともあります。
このツールは、危ない操作をする前に確認を出します。最初はほとんどの操作で止まります。そこで毎回は聞かなくてよいと答えたものが、設定に貯まっていきます。自分の設定ファイルには、いま349件の許可ルールが入っています。使い続けた分だけ、確認の回数が減っています。
そのうえで、線を2つ引いています。
- 外に出るもの(公開・投稿・送信・PRのマージ)は必ず自分が最終確認する。下書きまでは任せる
- 書き換えは差分で確認する。Gitに入れてあるので、何を触ったかは後から必ず見える
任せてよいかどうかは、能力の問題として語られがちですが、実際には取り消せる形になっているかで決まります。取り消せるなら任せ、取り消せないなら自分で実行します。
1年使って分かったこと
文脈は、書いておけば使われます。特別な書き方は必要ありませんでした。毎回繰り返していた指摘を1行にするだけで変わりました。
常時読ませるファイルは、削るほど精度が上がります。全部を常に読ませると、かえって精度が落ちます。
貯める場所と使う場所は分けています。生ログは整形しません。整形しないので続きます。
効果が出るまでには時間差があります。最初の1週間は作業が増えるだけで、効いてくるのは前に決めたことが溜まってからです。
うまくいかなかった例もあります。凝ったフォルダ構成を先に作ったときは、中身が入らないまま空のフォルダだけが残りました。いまは中身が5個未満のフォルダは作らないことにして、構造は中身が溢れてから作っています。
はじめ方
- フォルダをひとつ作ります。名前は何でもかまいません
- その中に
CLAUDE.mdを作り、3行だけ書きます。自分が誰か、何をしているか、どう答えてほしいか - 同じフォルダでAIを起動して、1週間、日誌を書きます。整形はしません
- 週末に読み返して、繰り返し出てきたものを
CLAUDE.mdへ1行足します
3の時点で、毎回説明する手間は減ります。凝った構成は、あとから中身に合わせて作れば間に合います。
この続きとして、手順そのものをAIに持たせたり、作業の記録を自動で取らせたり、カレンダーやメールを同じ場所から触らせたりする話があります。それは別の記事に書きました。
